少年部指導員からのメッセージ

少年部稽古 子供に合気道を学ばせたい親御様へ

 私は合気道を始めて7年目。まだまだ自分自身の技を磨かねばならない修行の身ですが、ある2つの思いから、吉岡先生にお願いして、子供たちの指導をお手伝いさせていただいております。

 子供たちに合気道を学んでほしい2つの思い。

 1つ目は「事故から自分を守る術を身につける」ということ。
 私は死ぬところを「受身」で助かった経験があります。
 小学校4年のときに、かくれんぼをしていて塀を飛び越えたときに足が塀にひっかかって頭から落ち、1m下のコンクリートで右頭部を打ちました。その夜、吐いて、翌朝、病院で「脳内出血。即入院、絶対安静。あと1日遅かったら死んでいた。」と言われ、2週間入院、1ヶ月学校を休みました。
 頭を打つ怖さを体が覚えたのでしょう。6年生のとき、同級生の腕白が私を自転車に二人乗せさせ、怖がらせようとスピードを上げながら自転車を左右に大きくゆすりました。「やめて」と言った途端に、私は走っている自転車から右に転落させられました。目の前に迫るアスファルトの道路。「また頭を打つ!」という恐怖を感じました。
 次に気づいたとき、私は道路に座っていました。頭は打っておらず、しかし、右肩が痛かったことを覚えています。今、振り返るに、まったくの偶然で、あるいは過去の経験から体がとっさに頭をかばい、右肩から(教わったこともない)「前方回転受身」をして助かったのだと思います。

少年部稽古
 2つ目は「暴力から自分を守る術を身につける」ということ。
 私は中学校のときにいじめられました。昨今、いじめがどこの学校でも見られるようになったと感じ、7年前、子供たちに護身術を身につけさせたいとの思いから、この道場を見学しました。寺田先生が大男を投げ飛ばすのを見て、当時小学校5年の長男は「超能力かと思った」と入門を決意。次男も小学校1年から合気道を始めました。
 長男は中学校に入ったときに、他の小学校から来た生徒からちょっかいを出され、また、次男も同級生に手を出された時期がありました。しかし、実際に暴力をふるわれたときには、そのときまでに学んだ合気道の技を使って相手を一回転させ、「こいつには手を出すとまずい」とわからせることができ、自分で問題を解決できました。それぞれが無事に過ごせている今、寺田先生、吉岡先生の道場に来られたことを感謝しております。

 今後、意図的でなくても、つまずいたり、ころんだり、ふいに突き飛ばされたりすることもあるかもしれません。その一瞬に自分の命を守る術を身につけてほしい。
 あるいは、学校で、社会で暴力をふるわれることや襲われることがあるかもしれない。そのときには自分の身を守ってほしい、あるいは「こいつは手を出すと痛い目にあう」とわからせてほしい。
 その思いで子供たちに技を身につけてほしいと思って接しております。

少年部稽古
 一方で、合気道を学ぶ上で子供たちにはわかっていてほしいこともあります。 合気道は自らを磨くものであって、人に勝つためのものではない、「おまえより俺のほうが強い」というためのものではない、ましてや他者をいじめるための武器ではないということです。
 特に、「寺田先生の合気道」は「襲ってくる相手をも傷つけないで制する」ことを主眼としたものです。稽古でも、「相手の肘を痛めないように」などのご注意を受けます。私はこうした寺田先生の合気道の「心」を大切に守りたいと思っております。
 子供たちの中には、いじめられた経験のある子供もいるのかもしれません。そうした子供たちが、自分の身を守るためでなく、翻って他者をいじめるために技を使うことは絶対に許しません。また、技を使わずとも、寺田先生の道場に来ている者は、一人を大勢で狙い撃ちしてよってたかっていじめたりからかったり無視したりということがあってはなりません。寺田先生の「お心」を踏みにじっている行為だからです。
 そうした言動を見かければ注意をして参ります。それでも繰り返しする子には、「審査を受ける資格も、稽古をする資格もない。帰りなさい。」と厳しく叱る所存です。どうぞこの点ご諒解ください。

 さて、少年部の主な行事は、11月の演武大会、6月に審査があります。
 私は「子供にとって、ある目標のために努力し、大勢の人の前での発表にあたって集中し、たくさんの拍手を受ける経験をすることが大事だ」と考えております。5年前、息子2人と私と3人で演武会に出場させていただき、終わった後で拍手を受け、「やったー」と肩を抱き合ったことがありました。我が子ながらその大会へ向けての努力、稽古への集中力には目を見張り、成功させた子供たちを誇りに思いました。

少年部稽古
 審査に合格すれば級があがってゆき、帯の色が変わってゆきます。
 白(無級)→青(8級)→黄(6級)→橙(4級)→緑(2級) 今いる子供は最長で8年、次回緑を受けます。
 受審するには
 ・まず稽古に出席していること。(基準は出席率80%とされていますが、目安として月に少なくとも2回は出ていただきたいと考えます。)
 ・会費を納めていること。
 級に応じて審査技の種類も変わり、また増えてゆきます。
 審査のポイントは「一つ一つの技が正確にできているかどうか」が基本ですが、級とともに要求されるレベルも上がってゆきます。また、子供の場合は特に
 ・礼儀作法、あいさつができるか
 ・元気に声を出しているか
 ・稽古に集中していられるか
 なども考慮されます。
 子供は練習時間も大人に比べて短く、また体ができていないために、個人差もありますが年に1級ずつ上がってゆくのが一般的な昇級スピードです。

 私も指導のお手伝いで何かと行き届かない点もあろうかと思います。何卒ご理解賜り、お力添えいただけますようお願いいたします。

2007年10月28日
土井正一